本郷弓町のクス
樹齢400-600
樹種クスノキ(Cinnamomum camphora)
文京区でいちばん大きな木は、公園にはない。本郷の狭い通り沿いに、住宅と事務所を両側に押しつけられ、向かいには飲食店が並ぶ一角に立っている。樹高20メートル、幹回りは8.4メートルか8.5メートル、どちらの記録者に聞くかによる。日本語版ウィキペディアは小さいほうの数字を、文京区観光協会は大きいほうを載せている。この形の幹に巻尺を回せば、10センチの差はふつうに出る。 どちらも樹齢をおよそ600年としている。植えた年の記録ではなく推定である。額面どおり受け取れば、1603年に徳川が江戸を幕府の地と定めるより前から、この木はすでに大木だった。以来、周りの街区が建て替えられた回数を数えた者はいない。 このあたりの名前は、誰が仕組んだわけでもなく響き合っている。かつてこの町は御弓町と呼ばれた。幕府の弓組が住んだことに由来し、だからこの木は弓町の大クスと呼ばれる。その後この土地には、中世の武将・楠木正成の子孫と伝えられる一族の屋敷があった。楠木の楠は、この木そのものの字である。 司馬遼太郎は1990年代初めの『街道をゆく』でこの木を書いている。文京区は保護樹木に指定しており、国ではなく区の指定である。門も料金もなく、駐車場もない。本郷三丁目から歩いていくと、木はただそこにある。道をふさぐようにして。
- 幹回り
- 8.45 m
- 場所
- 1-28-32 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo (Hongo, Bunkyo, Tokyo)
- 見学
- 無料。本郷の住宅と事務所が密集した一角の、狭い公道沿いに立っている。通りから見えるし、歩いて近づける。敷地内に駐車場はないので、駅から歩くのがよい。
- 行き方
- 本郷三丁目駅(東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線)から徒歩5~10分、または春日駅(都営大江戸線・都営三田線)から徒歩6分。
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