1896年、この木の下で働いていた一人の研究者が、植物の殖え方についての常識を覆した。平瀬作五郎は画工から研究者になった人物で、大学の学位を持たないまま、当時の東京帝国大学の植物園にあるこの木の胚珠を何年も観察し続けた。そして、イチョウが鞭毛を持って泳ぐ精子をつくることを発見した。ほかのどの種子植物にも知られていない殖え方だった。この発見はシダ植物と顕花植物のあいだの進化の道筋についての前提を書き換え、すでに古い系統だったイチョウを、文字どおりの生きた化石にした。2億年前の祖先と同じやり方でいまも殖えている植物である。発見から60年にあたる1956年、木の根元に記念碑が建てられた。木そのものは、発見のもとになった胚珠をつけた雌株のひとつで、年輪からの推定樹齢はおよそ300年。自分の科学史上の重さなど気にする様子もなく、秋にはいまも銀杏を厚く敷き詰めるほど落とす。
Koishikawa Botanical Garden, 3-7-1 Hakusan, Bunkyo-ku, Tokyo 112-0001
白山駅(都営三田線)から徒歩10分。
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