大原のこの小さな寺では、拝観者は赤い毛氈に座り、柱と鴨居が額縁のように切り取る戸口ごしに庭を眺める。額縁庭園と呼ばれる、意図してつくられた構図である。その生きた絵の主役がこの松で、およそ700年かけて、市の南東にひとつだけそびえる三上山の姿を映すかたちに仕立てられてきた。円錐形から近江富士とも呼ばれる山である。松は京都市の天然記念物に指定されている。寺にはもうひとつ、1600年の武士たちの最期の血の跡が残る伏見城の床板を天井に用いた血天井があり、この松はそれと並ぶ中心的な見どころになっている。2021年には樹齢と乾燥による衰えの兆しが見え、庭師の手当てが目に見えて入った。近年の拝観者の記録では、その後は樹勢を取り戻しつつあるという。大原は市街の北の山あいにあり、京都の名だたる寺々より静かで、この松は広い風景ではなく一本の木の輪郭を軸に組み立てられた庭で、足を延ばす手間に応えてくれる。
187 Shorin-in-cho, Ohara, Sakyo-ku, Kyoto 601-1242
京都バス「大原」下車、徒歩12分。
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